設計や加工依頼の際に、
よく頂くご質問や
留意点をまとめてみました

「SUS303と304、どっちを選ぶ?」

SUS303とは、切削加工用のステンレス鋼です。
ステンレスは硬くて、熱がこもりやすく、熱膨張しやすく、さらに、ねばくて切削加工しにくい材料です。
SUS304の切削性を改善するために、P(リン)とS(イオウ)を添加したのが快削鋼SUS303です。

「A2017とA5056、5052、どれを選ぶ?」

A2017はジュラルミンと呼ばれている材料です。
鋼材に匹敵する強度を持ち鍛造することも可能。耐食性に劣るので防食処理が必要です。
また切削性が良好ですが、溶接性は劣ります。

A5052
中程度の強度がある非熱処理合金です。耐食性・溶接性が良く、強度の割に疲労度が高い。 一般的な工作に一番向いている材料。冷間加工のままでは強さがやや低下し、伸びが増加するという経年変化を示すので安定化処理が行われます。

A5056
A5052よりも多少Mgの量を多くし強度を高めている。耐食性に優れ、切削加工による表面仕上がり、アルマイト処理性(染色性)が良い。

「アクリル・ABS・PEEK、樹脂にも色々種類があります。」

SUSやアルミなどと比べるとアクリル板の板厚の規格(市場性があるという意味で)は少なく、注意が必要です。例えばアクリルの透明板の規格は下記の通りです。仮に12mm.の板厚で設計した場合、13mm.の材料から削って行かなければならず、なおかつ透明度が必要となるとバフ研磨等の作業が加わってしまいます。

透明アクリル板の規格 <板厚> 
1  1.5  2 3 4 5 6 10 13 15 18 20 25 30 40 50 (mm)

「インチネジ」について

通常日本で使われるねじは「ミリ単位」ですが、「インチ単位」で出来ているネジを「インチネジ」と言い、別名「ユニファイねじ」とも言われます。

作図
「加工者に理解してもらう事」が基本です。

「数字が小さすぎて読めない。」「実線だと思っていたら、実は破線だった。」CAD上では図面は拡大縮小自由自在ですが、プリントアウトされた図面を見ながら作業する加工者には、「見やすい図面」が効率的な面からも必要となります。
プリントアウトした後に、理解しにくい点がないかの再確認をお願いします。 必要があれば部分的な「拡大図」を作図したり、形状が複雑な部品に関しては「斜視図・3D」の図を添えるとイメージがしやすく、加工がスムーズに進みます。

「変更履歴」は大切です。

形状変更や寸法変更があった場合、図面を見てひと目で「ここが変更になった」と分かるような「目印(通常は三角印)」をつけておきましょう(別紙参照)。それが無いと「どこが変更になったのか」が分からなかったり、見落としてしまう恐れがあります。一枚の図面で何度も変更されるケースがあるので、「変更履歴」を記入しておくと直近の変更箇所もすぐに分かり、効率的です。

「寸法抜けで、機械がストップ!」

頂いた図面のチェックをこちらでもしてはいますが、それでも加工途中に寸法が抜けていたり、矛盾している箇所が見つかったりする場合があります。時には機械をストップさせて、寸法の回答を待たなければならないというケースもあります。
複雑な図面で寸法抜け等が不安な場合は、前もってCADデータをいただければ即対応が可能です。弊社使用CADはAutoCAD LT2006でDWG・DXFファイルなら開くことができます。(加工内容によっては3Dデータをいただく場合もあります。)

「組立の順番(手順)や向き」を考えて設計しましょう

それぞれは組み立てが可能でも、組み合わせると、どういう順番でも組み立たない機械になってしまうことがあります。予め、下記のことを留意して設計しましょう。
工具が入るか、レンチなどを回す角度は十分確保してあるか、論理的にはつくれそうでも、市販のレンチでは締めることが出来ないものもあります。
例えば下記は標準の六角レンチにおける首の長さですが、ボルトの頭の上には,下記のレンチの長さに数ミリの余裕をもった隙間をつくっておかないと締めることができません。
またレンチは最低でも60度以上は廻せるようにしないと、締めることができません(最近では首下が短いレンチや30度程度でも廻せるような特殊なレンチがありますが)。
ほかの工具を使う場合についても同様に考えた上でレイアウトを考えて下さい。

<一般的な六角レンチの例>

六角穴付ボルト M1.6
M2
M2.5 M3 M4 M5 M6 M8
 対辺の長さ(㎜)  1.5 2.0 2.5  3.0 4.0  5.0  6.0
 レンチの短い方の長さ(㎜)  14  16  18  20  25  28  32

 

加工・表面処理

「使用目的」を良く考え、可能な限り「加工工数の削減」に努めましょう。

図面を見させてもらうと「ここは本当にこんな高い精度が必要なのかな?」あるいは「ここは直角ではなく“R”(曲面)ではダメなのかな?」という箇所が時折見受けられます。
もし「ものづくり」の経験と実績がまだあまりなく、加工方法についても良く理解出来ていない段階だとすれば「加工工数を削減」を考えていただくのは難しい事かもしれません。
しかし「どうすれば工数を減らせるか」は「ものづくり」の根幹ですので、常に念頭においていただきたい課題です。(もちろん弊社からも工数削減のための最終的なご提案はさせていただきますので、あまり深刻に心配されなくても結構ですが。。。) 加工する前に必要な準備を「段取り」と言い、また加工対象物(通称“ワーク”)を加工する時に特別な固定具が必要になる場合があり、それを「治具」と言います。 これらも厳密に言えば「加工工数」に含まれ、コストに跳ね返ってきます。

 

「段取り」と「治具」・・・出来上がった部品には見えない隠れた加工工数

極端に言えば

(段取り\1,000)+(加工コスト\1,000)= \2,000/1個
これを10個作るとすると・・・
[(段取り\1,000)+(加工コスト\1,000×10個)]÷10=\1,100/1個
このように数量によって単価が変わってきます。ですから以前10個作った物を追加で1個作成する際、同じ価格で入手できない場合もありますので注意が必要です。逆に数が前回より増えれば価格が下がる可能性があります。

また「治具」は“イニシャルコスト”ですので、一度目の加工の時だけにかかるコストです。(すべての加工に治具が必要な訳ではありません)

「段取り」費用は通常「加工賃」の中に含まれます。「治具」の費用は別途扱いですが、なるべく以前使用した治具を工夫して加工するようにしています。また、金額的に大きく無い場合が多いので「サービス」させていただくケースがほとんどです。「治具は財産」と考え、別な機会に使える場合もありますので。。。

「メッキ」はした方が良いの?

メッキは装飾性と耐久性(耐磨耗や耐腐食)を目的として行われる表面処理です。ですから同じ装置でもメッキをする部品としない部品があったりします。「使用目的」によって処理するかしないかを検討してみて下さい。(ちなみに基本的にSUSにはメッキはしません。)

「ヘリサート」する所ってどういう所?

アルミ材・鋳鉄・プラスチックなどのねじ部は、頻繁に組立分解を行ったり、振動・熱・腐食・摩擦などが原因でねじ山が破損する場合があります。それを防止するために「ヘリサート」を用います。 (ただし前記材質だからと言ってすべてのネジ部をヘリサートにする必要はありません。)

部品表
「部品表は目次の役割」

加工品・購入品の点数が多ければ多いほど、「目次」の役割をする部品表は必要となります。それがないと部品管理が煩雑化して、混乱を招いてしまいます。項目は「品名」「図面番号(購入品の場合は型番)」「数量」「メーカー(購入品の場合)」などです。他に「材質欄」や「備考欄」をつけて、「購入品○○○を追加工」「図番○○○に接着」などと付け加えても良いかと思います。

「どっちがホント?」

部品表の数量と図面の数量とが違っていないか最終チェックを行うよう心掛けて下さい。

購入品
「弊社で購入か、それともそちらで?」

部品表に「購入品」があっても、弊社で購入する品物なのか判断できない場合があります。「ダブって」しまわないよう、購入品はどちらで用意するのかを明記して下さい。

「該当品が見当たりません」

指示いただいた型番で発注しても、上記のような回答がメーカーから返ってくることがあります。例えばミスミ社のシャフトなど「寸法指定」で発注する場合、「加工条件内の寸法」である必要があります。条件はカタログの隅に小さく書いてあって、見落としてしまいがちですが、後で慌てないためにも型番は注意深くカタログで確認して下さい。

「購入品の納期がそんなにかかるなんて!」

購入品の納期が予想以上に長い場合があります。せっかく図面を書いても購入品が揃わなければ「モノ」にはなりません。短納期の物に切り替えても、設計変更の必要な箇所が大量に出てきて「やり直し」に近くなっては意味がありません。事前に購入品の納期を確認し、時間のかかりそうな物は前倒しで手配しておく方が安心です。

「組立に必要なもの、ネジ1本までとは言いませんが」

組立を伴う物件の場合、本来ならネジ1本まで部品図に記入していただきたいのですが、弊社には標準的なネジやピン等の小物類は常備していますので、そこまでの記入は必要ありません。しかし、標準的でない物(例えば全長が特に長いネジ、極小ネジ等)は事前に調査して、部品表に明記していただければ組立前に用意しておきます。 

組立・調整
「組み立ててみて、初めて分かった・・・(汗)」

自分が書いた図面通りに品物が出来上がってきたのを初めて見て、「感動」する学生さんが沢山います。そんな姿を見るとこちらも本当に嬉しくなります。が、「よっしゃ!」と意気揚々と組立を始めても、「ものづくり」とはなかなか難しいもので、組立て初めて見えてくる「ガタつき」や「図面の不備」が行く手を阻んでしまうことがあります。
一度で完璧に行く方が少ないと言ってもいいかもしれません。その新たな課題の解決には、弊社は全面的に協力、迅速に対応するよう心掛けていますので、不安になる必要はありませんが、そのような避けがたいトラブルも加味し「組立期間」は少し余裕を持って考えていた方が良いかと思います。

いろいろ留意点を細かく書きましたが、あくまでも「参考」です。加工をご依頼いただく場合でも「知っていた方が良い程度」の事として、あまり不安にならず疑問に思った時はお気軽にご連絡下さい。 可能な限り全面的にバックアップ致します。